- Q.社員からの理不尽な要求にはどう対応すればいいですか?
A.まずは,従業員の要求の原因を探ることが重要です。
まずは,従業員の要求の原因を探り,会社としてのメリットとデメリットを検討しましょう。会社の成長につながるか,若しくは,過剰な要求かを見極めるということです。
一見,理不尽な要求にみえても,会社の本質に原因がある場合もあります。従業員がそのような行動を起こすのは,会社に何らかの不満があってのことだと思います。会社が知らず知らずのうちに従業員が不満を抱える原因を作っていることもあり得ます。その原因について検証・改善することにより,会社にとってより大きな利益をもたらす要因になるかもしれません。
検証の過程において,従業員の要求が会社として応じることができない利己主義で過剰な要求であると判断した場合は,要求に対する過程を踏まえ,会社としての判断をしっかりと説明しましょう。曖昧な回答では問題解決にならず,新たな不満を生じかねません。
従業員を育てることは,会社にとっては大きな課題の1つですから,従業員からの要求は,会社にとっての成長の機会と受け止めてはどうでしょうか。
- Q.モンスター社員に困っています。どう対応すればいいでしょうか?
A.まずは,根気強く,業務を改善する指導を繰り返すことが大事です。
モンスター社員の定義は難しいところですが,問題のある従業員の共通するところとして,勤務態度や協調性に問題があり,自己の要求を押し通そうとする傾向があります。このような従業員は,上司からの業務命令に従わず,反抗することが多いでしょう。会社がこのような従業員を放置すると,職場内の雰囲気が悪化するのはもちろんのこと,他の従業員の士気の低下や,放置している会社への不満にもつながります。
会社としては,このような従業員に労力を使いたくないというのが正直なところではないでしょうか。
しかし,会社には,従業員を採用した責任がありますので,まずは,根気強く,業務を改善する指導を繰り返し,教育する努力をしていただきたいと思います。それでも問題が改善しない場合,改めて,懲戒の手続に入ります。懲戒の手続が繰り返されれば,解雇の手続に入ることになります。
- Q.ハラスメント相談窓口設置義務化はどう対処すればいいですか?
A.ガイドラインを参考にしたうえで,規程を作成しましょう。
令和2年6月1日,パワハラ防止法が施行されました。
同法により,大企業に対しては施行された日から,中小企業についても令和4年4月1日より,「パワハラ防止のための措置」を講じることが義務化されています。
「パワハラ防止のための措置」とはどのようなものか一言では難しいところですが,厚生労働省が告示している「職場におけるハラスメント関係指針」などのガイドラインには,ハラスメント相談窓口設置に関する規定が明記されています。
相談窓口設置自体は,ガイドラインを参考にしたうえで,規程を作成するなどして,対応することは容易かと思います。
しかし,問題は,相談窓口の運用と,相談に対する適切な対応です。相談窓口での対応を誤ると,相談者の会社に対する不満や不信感が募り,ハラスメントの行為者のみならず,職場環境配慮義務を怠った会社に対して責任追及してくる可能性がありますので,相談者のプライバシーと尊厳を尊重し,相談内容について,迅速かつ適切に対応してください。
- Q.懲戒処分を検討しています。不当解雇になるケースもありますか?
A.懲戒事由がある場合でも,解雇は処分として不当であると従業員から争われるケースもあります。
懲戒処分とは,業務命令に従わない従業員や会社に対する非違行為を行った従業員に対し,会社が企業秩序を維持するために認められる権限(懲戒権)です。
懲戒権は,従業員にとっては不利益を課せられるものですから,処分の事由を就業規則に記載しておくことが重要です。懲戒を行使する場合,まずは,就業規則で周知していた懲戒事由があるか,次にある場合は,どのような処分が相当か,という判断をしていくことになります。また,処分の種類については,軽いもので戒告,重いもので解雇という処分をすることになります。
しかしながら,たとえ懲戒事由がある場合でも,解雇は処分として重すぎ,不当であると従業員から争われるケースもあります。
- Q.残業代のことで社員ともめています。どのように対処すればいいですか?
A.従業員の言い分をしっかりと聞き取りしたうえで,適切な対応をしましょう。
残業代は,労働基準法に基づいて支払いをすることが定められています。
従業員との間で揉める原因としては,残業時間の計算方法や残業手当の計算単価についての認識の違い,残業代の支払い自体されていないことなどが考えられます。残業代の未払いについては,労働基準監督署からの是正を命じられることになりますので,従業員の言い分をしっかりと聞き取りしたうえで,適切な対応をする必要があります。
最近のご相談で特に多いのは,弁護士事務所を通じて,未払残業代が生じているから資料の提出を要求してきたという相談です。このような状況になると,本来開示する必要のない会社資料の開示を求められ,交渉で解決しなければ訴訟を提起されることになります。
従業員から残業代未払いの話がでたときは,従業員の言い分を十分に尊重し,会社の給与処理に誤りがないかを精査してうえで,初動を丁寧に行うことが,スムーズな解決につながるといえます。
- Q.業務で労災認定されたときはどう対処すればいいですか?
A.まずは会社として当該従業員のためにできる限りの対応をすることが重要です。
従業員の業務中の事故について労災認定された場合,会社としては,そこで手続が終了したと思ってはいけません。従業員の怪我の程度によっては,後遺障害が残るなど,従業員の将来に大きな影響を及ぼすこともあります。
なかには,労災で補償される金銭では不十分として,会社に損害賠償を請求してくる従業員もいます。後遺障害が残る場合,労働能力の一部が喪失すると考えられていますので,将来,得られたであろう収入をまとめて請求されることになりますから,多額の賠償金を支払うことになりかねません。
このような従業員の請求を法的に防止することは難しいですが,まずは会社として当該従業員のためにできる限りの対応をし,連絡を密に取り合う等,当該従業員との信頼関係を継続していくようにすることが大事です。
- Q.採用時の条件で社員ともめています。どのようにすればいいでしょうか?
A.事前の面接時に、募集要項等の内容を踏まえて労働条件を確認しておきましょう。
従業員を採用するとき,募集要項等の内容と,採用決定後の労働条件通知書の内容に相違があるとしてトラブルになることがあります。
従業員は,募集要項等の内容を期待して採用に応募してきているので,募集要項等の内容が,労働契約の内容になると考えた方が良いです。
そのため,面接時には,募集要項等の内容を踏まえて労働条件を確認し,採用時の労働条件通知書(労働基準法で定められている項目を記載する)には,従業員からの書面をもらうか雇用契約書の体裁をとるなど,相互に確認したことを明確にすることで,トラブルを防止することができます。
- Q.退職した社員が顧客の引き抜きをしているみたいです。何か対処法はありますか?
A.一定期間,会社の顧客先への営業活動をしないことを誓約してもらうことが有効です。
結論から申し上げますと,退職した従業員が,勤務していた会社の顧客に接触し,営業活動をすること自体は法的に妨げられることはできません。
しかし,退職した従業員が勤める会社が同業である場合,顧客の引き抜き行為によって,会社の利益を損なうおそれもあります。
また,顧客名簿は,通常,営業秘密に該当するとも言い切れないため,不正競争防止法によって,行為の差し止めや損害賠償請求をすることも難しい状況です。
そこで,会社としては,従業員が退職する際,一定期間,会社の顧客先への営業活動をしないことを誓約してもらうことが有効かと思います。また,業種によっては,一定期間,同じ経済圏内において,競業を禁止することを考えてもよいかもしれません。もっとも,退職した従業員にも生活がありますから,過度な制約にならいないよう配慮する必要はあります。